特定技能外国人を受け入れる企業や登録支援機関の皆様は、在留資格の認定申請・変更申請・更新申請に関する書類を、どのような体制で作成・提出していますか。
「登録支援機関として申請取次の承認を受けているから、申請書類の作成もできる」
「毎月の支援委託費用に、在留資格の申請・更新に関する業務も含めている」
「行政書士に依頼すると費用がかかるため、書類作成からオンライン申請まで自社で対応している」
このような運用をしている場合は、一度、業務内容と契約形態を確認することをお勧めします。
2026年10月には、静岡県沼津市で、行政書士の資格がないにもかかわらず、法人から依頼を受けて国に提出する許可申請書類を作成した疑いで男性が逮捕されたと報じられました。これは特殊車両の通行許可に関する事件ですが、官公署に提出する書類の作成と行政書士法の関係を改めて考えるきっかけとなります。
特定技能の在留資格申請についても、登録支援機関が担う支援業務、申請取次、申請書類の作成は、それぞれ区別して考える必要があります。
本コラムでは、登録支援機関が特定技能に関する書類を作成・取次する際の注意点と、行政書士に依頼するメリットを解説します。
1.登録支援機関は特定技能の申請書類を作成できるのか?
結論からいうと、登録支援機関として登録されていることや、申請取次の承認を受けていることだけを理由に、報酬を得て在留資格申請書類を自由に作成できるわけではありません。
行政書士法第1条の2では、行政書士の業務として、他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類などを作成することが定められています。また、同法第19条では、行政書士または行政書士法人でない者による業務の制限が規定されています。
特定技能の在留資格に関する手続では、次のような書類を準備することがあります。
- 在留資格認定証明書交付申請書
- 在留資格変更許可申請書
- 在留期間更新許可申請書
- 雇用契約書・雇用条件書
- 1号特定技能外国人支援計画書
- 受入れ機関に関する説明書・確認書類
- 申請理由書や各種補足説明資料
これらの書類のうち、どの書類を誰が作成するのか、どのような依頼関係があるのか、報酬を得て業として作成しているのかなどによって、法的な判断が変わります。
たとえば、受入れ企業が自社の申請書類を自ら作成することと、登録支援機関が企業や外国人から依頼を受け、報酬を得て申請書類を作成することは、同じではありません。
また、雇用契約書や支援計画書などについては、受入れ企業が雇用・支援の実態に即して作成すべきものもあります。行政書士に依頼する場合でも、企業が担うべき判断や情報提供まで任せきりにするのではなく、役割分担を明確にすることが大切です。
2.「申請取次の承認」と「申請書類の作成」は別の問題
登録支援機関の職員が関わる在留資格申請では、特に注意したいのが「申請取次」と「書類作成」の違いです。
出入国在留管理庁によると、一定の要件を満たす登録支援機関の職員は、申請等取次者として承認を受け、必要な手続を経ることで、在留申請オンラインシステムを利用できます。
ただし、登録支援機関の職員がオンライン申請を行う場合には、申請等取次者としての承認に加え、特定技能所属機関からオンライン申請の代行に係る依頼を受けていることなど、所定の条件を満たす必要があります。また、登録支援機関については、特定技能所属機関から1号特定技能外国人支援計画の全部の実施を委託されていることも要件として示されています。
さらに、出入国在留管理庁は、弁護士・行政書士以外の者が、業として、申請人などから手数料を得るなどして、自ら在留申請オンラインシステムに申請情報を入力した場合、行政書士法違反などとなることがあると注意喚起しています。
ここで重要なのは、申請取次に関する承認が、行政書士法上の書類作成業務を包括的に認めるものではないという点です。
申請を取り次ぐことができるからといって、報酬を得て申請書類を作成することまで当然に認められるわけではありません。
登録支援機関がオンライン申請を取り扱う場合は、書類の作成者、情報の入力方法、依頼者との関係、報酬の実態を確認し、適法な運用となっているかを検討する必要があります。
3.支援委託費用に申請書類作成を含めている場合も注意
登録支援機関の多くは、受入れ企業から月額の支援委託費用を受け取り、特定技能外国人への生活オリエンテーション、相談対応、定期面談、各種支援などを行っています。
その一方で、在留資格の認定・変更・更新申請についても、支援委託費用の範囲内で対応しているケースがあるかもしれません。
この場合、注意したいのが、申請書類の作成費用を別途請求していなければ問題がない、というわけではないことです。
日本行政書士会連合会は、登録支援機関の職員による申請取次に関する会長声明において、登録支援機関が他の業務に関する報酬と包括して受け取る場合も含め、報酬を得て在留申請書類を作成する行為について、行政書士法の遵守に十分留意するよう求めています。
そのため、次のような運用をしている場合は、契約内容と実際の業務を確認することをお勧めします。
- 月額の支援委託費用に、在留資格申請書類の作成が含まれている。
- 登録支援機関の職員が、外国人本人や企業から情報を集め、申請書や理由書を作成している。
- 在留期間更新のたびに、書類作成からオンライン申請まで一括して対応している。
- 契約書では「申請サポート」と記載しているが、実際には申請書類の作成を行っている。
もっとも、これらの事情だけで直ちに違法と断定できるわけではありません。契約書の名称や料金の名目だけでなく、業務の実態を踏まえた検討が必要です。
登録支援機関が行う支援業務と、行政書士法上の制限が問題となる書類作成業務を整理し、適切な業務分担を行うことが重要です。
4.登録支援機関が特定技能の申請で注意すべき5つのポイント
① 誰が申請書類を作成しているかを明確にする
まずは、在留資格申請書や理由書などを実際に誰が作成しているのか確認しましょう。
受入れ企業が自社の申請書類を作成する場合と、登録支援機関が他人から依頼を受けて書類を作成する場合では、法的な検討事項が異なります。
「入力作業を手伝っているだけ」「前回の書類をコピーしているだけ」という場合でも、実際の作業内容を確認することが大切です。
② 報酬の名目だけで判断しない
申請書類作成の対価を「申請手数料」「事務手数料」などの名目で別途請求している場合だけでなく、支援委託費用などに含めて受け取っている場合も、実態に即した確認が必要です。
別料金にしていないことだけを理由に、問題がないと判断しないようにしましょう。
③ 申請取次の承認範囲を確認する
申請取次者として承認を受けているか、オンライン申請に必要な利用申出が承認されているか、受入れ企業から所定の依頼を受けているかなど、制度上の要件を確認しましょう。
申請取次の承認と、行政書士法上の書類作成業務の制限は別の問題です。両者を混同しないことが重要です。
④ 受入れ企業と登録支援機関の役割分担を明確にする
雇用条件、職務内容、賃金、支援計画、受入れ体制など、申請に必要な情報の多くは、受入れ企業が実態に即して確認する必要があります。
登録支援機関は、支援業務を適切に実施するとともに、企業が準備すべき情報や資料を整理し、必要に応じて専門家と連携できる体制を整えることが大切です。
⑤ 判断に迷う案件は早めに行政書士へ相談する
転職を伴う在留資格変更、雇用条件の変更、在留期限が迫っている更新、過去の届出に不備があるケースなどは、単純な書類作成だけでは対応できないことがあります。
また、行政書士法上の業務範囲について判断が難しい場合は、独自の解釈で運用を続けるのではなく、早めに専門家へ相談することをお勧めします。
5.特定技能の申請・更新を行政書士に依頼するメリット
行政書士に依頼することには費用がかかります。しかし、適切な役割分担を整えることは、受入れ企業と登録支援機関の双方にとって重要です。
法令を踏まえた業務分担を検討できる
登録支援機関の支援業務、申請取次、申請書類作成の関係を整理し、どこまでを自社で行い、どこから専門家に依頼すべきかを検討できます。
申請内容と添付書類の整合性を確認できる
特定技能の申請では、雇用契約書、雇用条件書、支援計画書、受入れ機関に関する資料など、複数の書類の内容を整合させることが重要です。
行政書士に依頼することで、案件に応じた必要書類の確認や申請内容の整理を進めやすくなります。
個別の事情に応じた手続を検討できる
転職、職務内容の変更、在留期間の更新、受入れ企業の状況変化など、案件によって確認すべき事項は異なります。
早い段階で相談することで、必要な資料や手続の方向性を整理し、申請準備を進めやすくなります。
なお、行政書士に依頼したからといって、在留資格の許可が保証されるわけではありません。許可の可否は、個々の申請内容や審査結果によります。
6.特定技能の申請業務でお困りなら、L&C行政書士事務所へご相談ください
特定技能外国人の受入れでは、在留資格の手続だけでなく、雇用契約、支援計画、定期面談、届出など、多くの業務が関係します。
そのなかで、登録支援機関が担うべき支援業務と、行政書士に依頼する申請書類作成業務の区別が曖昧になっているケースもあるのではないでしょうか。
L&C行政書士事務所では、介護・医療分野を中心に、特定技能外国人の受入れに関する在留資格手続をサポートしています。
次のようなお悩みがある企業・登録支援機関の皆様は、ぜひご相談ください。
- 特定技能の認定・変更・更新申請を行政書士に依頼したい。
- 登録支援機関として、申請取次と書類作成の業務範囲を整理したい。
- 現在の支援委託契約や申請業務の運用に問題がないか確認したい。
- 転職や雇用条件の変更など、個別の事情がある申請について相談したい。
- 今後の外国人材の受入れに向けて、適切な申請体制を整えたい。
「今までこの方法で対応してきたから大丈夫」と考えるのではなく、現在の運用を一度確認してみませんか。
特定技能の在留資格申請・更新に関するご相談は、L&C行政書士事務所までお気軽にお問い合わせください。
お問い合わせはこちら:
https://linkandc.com/contact
適切な業務分担と専門家との連携を通じて、企業・登録支援機関・外国人本人の三者が安心できる受入れ体制づくりをサポートします。
参考資料
- 行政書士法(e-Gov法令検索)
- 出入国在留管理庁「所属機関・公益法人・登録支援機関の職員の方」
- 出入国在留管理庁「オンラインでの申請手続に関するQ&A」
- 日本行政書士会連合会「登録支援機関の職員が行う申請取次ぎに関する声明」
- FNNプライムオンライン「無資格で行政書士業務代行した疑いで53歳の男を逮捕」
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。個別の業務が行政書士法に抵触するかどうかは、依頼関係、報酬、実際の業務内容などを踏まえて判断する必要があります。

