【行政書士法違反に注意】特定技能の申請・更新を登録支援機関が自社で書類作成していませんか?登録支援機関が知っておくべきリスクと対策

特定技能外国人を受け入れる企業や登録支援機関の皆様は、在留資格の認定申請・変更申請・更新申請に関する書類を、どのような体制で作成していますか。

「登録支援機関だから、在留資格の申請書類も作成できる」
「申請取次の承認を受けているので、書類作成から申請まで対応して問題ない」
「行政書士に依頼すると費用がかかるため、支援業務の一環として自社で対応している」

このような運用をしている場合は、一度、自社の業務内容と契約形態を確認することをお勧めします。

2026年10月、静岡県沼津市で、行政書士の資格がないにもかかわらず、法人から依頼を受けて国に提出する許可申請書類を作成した疑いで、53歳の男性が逮捕されたと報じられました。

この事件は、特定技能の在留資格申請を取り扱う企業や登録支援機関にとっても、決して無関係な話ではありません。

本コラムでは、今回の報道をきっかけに、行政書士法と特定技能の申請業務の関係、登録支援機関が注意すべきポイント、そして行政書士に依頼するメリットを解説します。

1.沼津市で報じられた行政書士法違反の疑いによる逮捕

2026年10月、テレビ静岡などの報道によると、静岡県沼津市に住む53歳の男性が、行政書士の資格を持たずに、法人から依頼を受けて国土交通省に提出する「特殊車両の通行許可」に関する書類を作成した疑いで逮捕されました。

報道によれば、男性は約2万円の報酬を受け取ったとみられ、約40の顧客を抱え、少なくとも1年以上にわたって行政書士業務を行っていた疑いがあるとされています。

現時点では、あくまでも逮捕容疑に関する報道であり、有罪が確定したということではありません。

しかし、この報道から改めて考えるべきなのは、官公署に提出する書類を、他人から依頼を受けて報酬を得ながら業として作成する行為には、法律上の制限があるという点です。

行政書士法第1条の2では、行政書士の業務として、他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類などを作成することが定められています。また、同法第19条には、行政書士または行政書士法人でない者による業務の制限が規定されています。

つまり、問題となるのは単に「書類を作ったかどうか」だけではありません。誰の依頼で、どのような立場で、どのような報酬を受け取り、どのような業務を継続的に行っていたのかという実態が重要になります。

この考え方は、特定技能外国人の在留資格申請をめぐる業務についても、確認しておく必要があります。

2.特定技能の申請でも、行政書士法への理解が必要

特定技能外国人を受け入れる際には、在留資格認定証明書交付申請、在留資格変更許可申請、在留期間更新許可申請など、出入国在留管理庁に提出するさまざまな書類が必要になります。

申請書だけでなく、雇用条件書、雇用契約書、支援計画書、受入れ機関に関する資料、各種説明書や確認書類など、案件に応じて多くの書類を準備しなければなりません。

これらの手続を円滑に進めるため、登録支援機関が企業に代わって必要書類の案内や情報収集、支援業務などを行うことは珍しくありません。

しかし、ここで注意したいのが、登録支援機関として登録されていることと、行政書士法上、報酬を得て官公署に提出する書類を業として作成できることは、別の問題であるという点です。

登録支援機関は、特定技能外国人に対する支援を適切に実施する役割を担います。一方、在留資格申請に関する書類作成については、行政書士法をはじめとする関係法令に照らして判断する必要があります。

たとえば、次のような運用をしている場合は、業務内容を整理して確認することが大切です。

  • 登録支援機関が、受入れ企業から依頼を受け、在留資格申請書類を一から作成している。
  • 在留期間更新のたびに、外国人本人や受入れ企業から情報を集め、申請書や理由書などを作成している。
  • 支援委託費用の中に、在留資格申請書類の作成費用を含めている。
  • 「申請取次」の承認を受けていることを理由に、申請書類の作成から提出まで一括して対応している。

もちろん、これらの事情だけで、直ちにすべてのケースが違法になると断定することはできません。具体的な業務の内容、契約関係、報酬の実態などによって判断が異なります。

ただし、登録支援機関の職員が申請取次を行えることをもって、報酬を得て申請書類を作成する業務まで自由に行えると考えるのは危険です。

3.「申請取次の承認があるから書類作成もできる」は正しいのか?

ここは、特に誤解が生じやすいポイントです。

出入国在留管理庁は、一定の要件を満たす所属機関や登録支援機関の職員が、在留申請オンラインシステムを利用できることを案内しています。

登録支援機関の職員については、申請等取次者として承認されていること、所属機関からオンライン申請の代行に係る依頼を受けていることなど、所定の条件が定められています。

さらに、出入国在留管理庁は、弁護士・行政書士以外の者が、業として、申請人などから手数料を得るなどして在留申請オンラインシステムに自ら申請情報を入力した場合、行政書士法違反などとなることがあると注意喚起しています。

この案内からも、申請取次に関する制度と、行政書士法上の書類作成業務の制限は、区別して理解する必要があることが分かります。

整理すると、次のとおりです。

申請取次に関する承認

一定の条件のもとで、申請人に代わって申請書類を提出したり、所定のオンライン申請を行ったりするための制度です。

行政書士法上の書類作成業務

他人の依頼を受け、報酬を得て、官公署に提出する書類を業として作成する行為について、行政書士法上の制限が問題になります。

この2つは、同じものではありません。

したがって、登録支援機関が申請取次の承認を受けていたとしても、それだけで在留資格申請書類の作成業務が包括的に認められるわけではありません。

なお、所属機関が自社の申請書類を自ら作成する場合など、適法に行えるケースもあります。誰が書類を作成しているのか、誰から依頼を受けているのか、報酬を得て業として行っているのかを区別して判断することが重要です。

4.支援委託費用に申請書類作成を含めている場合は要注意

登録支援機関の業務では、毎月の支援委託費用として、外国人への生活オリエンテーション、定期面談、相談対応、各種届出の案内など、さまざまな支援業務の対価を受け取ることがあります。

その一方で、在留資格の認定・変更・更新申請についても、支援委託費用の範囲内で対応しているケースがあるかもしれません。

このような場合、単に「申請書類の作成費用という名目で別途請求していないから問題ない」と考えることはできません。

日本行政書士会連合会も、登録支援機関の職員による申請取次に関する声明において、支援業務などの報酬と包括して受け取る場合も含め、報酬を得て在留申請書類を作成する行為について、行政書士法の遵守に留意する必要がある旨を示しています。

したがって、次のような点を確認することをお勧めします。

  • 支援委託契約書に、在留資格申請書類の作成が業務として含まれていないか。
  • 月額の支援委託費用と、在留資格申請に関する業務の対価がどのように整理されているか。
  • 登録支援機関の職員が、実際にどの範囲まで申請書類を作成しているか。
  • 行政書士に依頼すべき業務と、登録支援機関が行う支援業務を明確に区分できているか。

契約書に「書類作成」と記載されているかどうかだけでなく、実際に何を行っているのかという実態も重要です。

5.特定技能の在留資格申請を行政書士に依頼するメリット

行政書士への依頼には費用がかかります。そのため、申請書類を自社や登録支援機関で作成することで、コストを抑えたいと考える企業もあるでしょう。

しかし、特定技能の在留資格申請は、単に決められた様式に情報を入力すれば終わるものではありません。

外国人本人の在留状況、これまでの就労歴、雇用契約の内容、受入れ機関の状況、必要書類の整合性などを確認しながら、適切な申請内容を整える必要があります。

行政書士に依頼する主なメリットは、次のとおりです。

① 行政書士法を踏まえた業務分担ができる

登録支援機関が担う支援業務と、行政書士に依頼する書類作成業務を整理することで、役割分担を明確にしやすくなります。

特に、複数の受入れ企業や多くの外国人を担当している場合には、業務フローを整備することが重要です。

② 申請内容と添付書類の整合性を確認できる

特定技能の申請では、雇用条件書、雇用契約書、支援計画書、受入れ機関に関する資料など、複数の書類間で内容が一致していることが大切です。

書類の記載内容に食い違いがあれば、追加資料の提出などが必要になる場合があります。

行政書士に相談することで、案件に応じた書類の確認や、申請内容を整理するためのサポートを受けられます。

③ 個別の事情に応じた申請方針を検討できる

在留期間の更新であっても、転職、職務内容の変更、雇用条件の変更、過去の届出状況など、個別の事情によって確認すべき事項が異なります。

また、在留資格の変更が必要なのか、更新申請で対応できるのかなど、手続の選択そのものが重要になるケースもあります。

判断に迷う案件について、行政書士に早い段階で相談することは、適切な申請準備につながります。

④ 企業と登録支援機関が本来の業務に集中しやすくなる

受入れ企業は雇用管理や職場環境の整備に、登録支援機関は外国人への支援に、それぞれ注力することが求められます。

申請業務の役割分担を適切に整理すれば、担当者の負担を軽減し、業務全体の管理体制を整えることにもつながります。

ただし、行政書士に依頼すれば必ず許可されるというわけではありません。許可の可否は、個々の申請内容や審査結果によります。

6.受入れ企業・登録支援機関が今すぐ確認したいこと

今回の報道をきっかけに、特定技能の在留資格申請に関わる企業や登録支援機関は、自社の業務体制を一度見直してみてはいかがでしょうか。

確認しておきたいポイントは、次の5つです。

  1. 書類作成者の確認:申請書や理由書などを、実際に誰が作成しているか。
  2. 契約内容の確認:支援委託契約や業務委託契約に、申請書類作成業務が含まれていないか。
  3. 報酬の確認:申請書類作成に対する報酬が、別料金または月額費用などに含まれていないか。
  4. 申請取次との区別:申請取次の承認を、書類作成業務まで認めるものと誤解していないか。
  5. 行政書士との連携:専門家に依頼すべき案件や、判断に迷う案件を相談できる体制があるか。

なお、行政書士に依頼する場合も、すべての業務を一律に外部委託しなければならないという意味ではありません。企業や登録支援機関が適法に行える業務は自社で行い、行政書士法上の制限が問題となる業務については、適切な専門家に依頼するという考え方が大切です。

7.まとめ:特定技能の申請業務は、役割分担を明確に

今回報じられた事件は、特殊車両の通行許可に関する書類作成をめぐるものであり、特定技能の申請に関する事件ではありません。

しかし、官公署に提出する書類の作成を業として行う場合には、行政書士法などの関係法令を確認する必要があるという点で、特定技能の申請業務にも通じる問題があります。

登録支援機関の職員が申請取次を行えることと、報酬を得て申請書類を作成できることは、同じではありません。

「これまで問題がなかったから」「ほかの登録支援機関も行っているから」という理由だけで、現在の運用が適法であると判断することは避けるべきです。

特定技能外国人を受け入れる企業と登録支援機関は、支援業務、申請取次、申請書類作成のそれぞれについて、誰が何を担当するのかを明確にしておくことが重要です。

特定技能の申請・更新を自社で行っている企業や登録支援機関の皆様は、この機会に業務内容や契約形態を確認し、必要に応じて行政書士への相談を検討してみてください。

法令を遵守した申請体制を整えることは、企業と登録支援機関を守るだけでなく、日本で働く外国人が安心して就労を継続できる環境づくりにもつながります。


参考資料

※本コラムは一般的な情報提供を目的としています。具体的な業務が行政書士法に抵触するかどうかは、依頼関係、報酬、作成業務の内容などを踏まえた個別の検討が必要です。