特定技能外国人を受け入れている企業の皆さまは、**「支援責任者の養成講習」**についてご存じでしょうか?
特定技能制度では、外国人が日本で安心して働き、生活できるよう、受入れ企業に対してさまざまな支援が求められています。
そして、制度改正により、2027年4月1日以降、特定技能所属機関や登録支援機関で支援責任者を選任する際には、一定の養成講習を修了していることが求められるようになります。
「自社も対象になるの?」
「登録支援機関に委託している場合はどうなる?」
「いつまでに受講すればいい?」
このような疑問をお持ちの企業担当者の方に向けて、今回は特定技能の支援責任者に関する養成講習について、企業が押さえておきたいポイントを分かりやすく解説します。
1.そもそも「支援責任者」とは?
特定技能1号外国人を受け入れる企業は、外国人に対する支援を適切に行うため、社内に**「支援責任者」と「支援担当者」**を選任する必要があります。
それぞれの役割は異なります。
支援責任者
支援責任者は、1号特定技能外国人に対する支援全体を管理・統括する立場です。
主な業務として、
- 1号特定技能外国人支援計画の作成
- 支援業務の統括・管理
- 行政機関との連絡調整
- 支援担当者への指示・管理
などがあります。
また、支援責任者は、特定技能外国人を直接監督する立場ではなく、中立的な立場であることが求められます。
支援担当者
一方、支援担当者は、外国人に対する支援を実際に行う担当者です。
例えば、
- 事前ガイダンス
- 出入国時の送迎
- 住居確保の支援
- 生活オリエンテーション
- 相談対応
- 定期面談
など、外国人と直接関わる業務を担当します。
支援責任者と支援担当者は兼任することも可能ですが、それぞれに求められる要件を満たす必要があります。
2.なぜ「養成講習」が必要になるの?
特定技能制度では、外国人に対して適切な支援を行うことが非常に重要です。
しかし、制度や入管関係のルール、労働関係法令などは複雑で、担当者が十分な知識を持っていなければ、知らないうちに問題が発生する可能性があります。
例えば、
- 労働関係法令の理解不足
- 賃金や労働時間に関する問題
- 生活オリエンテーションや定期面談の形骸化
- 外国人からの相談を適切に受けられない
- 支援責任者と外国人の直属の上司が同一人物になっている
といった問題です。
こうした背景から、特定技能外国人に対する支援の質を高め、適正な在留・就労環境を確保するため、支援責任者に対する養成講習の仕組みが設けられています。
3.2027年4月から何が変わる?
重要なのが2027年4月1日です。
2027年4月1日以降、特定技能所属機関または登録支援機関で支援責任者を選任する場合、原則として、
「過去3年以内に養成講習を修了した者」
であることが求められることになります。
さらに、支援責任者として選任され続けるためには、3年ごとに養成講習を受講して修了を継続する必要があります。
つまり、一度受講すれば永久に有効というものではありません。
企業としては、今後の支援体制を考えながら、計画的に受講について検討しておくことが重要です。
4.登録支援機関に全部委託している会社も対象?
ここは企業の担当者からよく出てくる疑問です。
特定技能外国人の支援を登録支援機関に全面的に委託している場合、企業側で支援計画の全部を実施する必要がないため、企業自身が支援責任者を選任する必要はありません。
そのため、登録支援機関に支援業務を全面委託している企業の社員については、養成講習の受講義務はありません。
一方で、制度への理解を深めるため、企業の担当者が養成講習を受講することは推奨されています。
また、登録支援機関側では、支援責任者が養成講習を修了していることが必要になります。
5.養成講習では何を学ぶ?
養成講習は、特定技能制度を適切に運用するために必要となる知識を幅広く学ぶ内容となっています。
添付資料では、講義と理解度テストを合わせて6時間の構成とされています。
主な内容は次のとおりです。
① 特定技能制度の概要
- 特定技能制度の目的・仕組み
- 各分野・業務区分
- 特定技能所属機関の基準
- 登録支援機関の基準
- 行政処分・罰則
- 二国間取決め(MOC)
② 出入国管理及び難民認定法
- 在留資格・在留手続
- 在留カードに関する手続
- 在留資格取消事由
- 退去強制事由
- 不法就労防止
③ 労働関係法令
- 労働基準法
- 最低賃金法
- 労働安全衛生法
- 職業安定法
- ハラスメント防止
- 同一労働同一賃金
- 妊娠・出産に伴う不利益取扱いの禁止
④ 1号特定技能外国人への支援
- 事前ガイダンス
- 出入国時の送迎
- 住宅確保
- 生活オリエンテーション
- 日本語学習支援
- 相談対応
- キャリアアップ支援
など、実際の支援業務に関する内容も含まれます。
6.最後には「理解度テスト」がある
講習を受ければ自動的に修了できるわけではありません。
講習の最後には、理解度を確認するためのテストが実施されます。
添付資料では、
- 20問
- ○×方式
- 正答率80%以上が合格基準
- 16問以上の正解が必要
とされています。
合格すると修了証明書が交付されます。
なお、不合格の場合だけでなく、遅刻や途中離席、受講態度などによって修了証明書が交付されない場合もあるとされています。
7.オンラインで受講できる?
養成講習は、オンライン形式での実施も想定されています。
ただし、単に録画された動画を見るだけではなく、講師と受講者がリアルタイムでやり取りできる形式が必要とされています。
例えば、
- Web会議システムを利用
- カメラをONにして受講
- 顔写真付き公的証明書による本人確認
- 移動中の車内などでは受講しない
- 静かな環境で受講
といったルールがあります。
対面形式で開催される場合もあります。
8.養成講習だけではなく、日頃の支援体制も重要
特定技能制度では、養成講習を受講することだけが重要なのではありません。
実際の外国人支援においては、日頃から適切な制度運用を行う必要があります。
特に注意したいのが、外国人本人に支援費用を負担させないことです。
事前ガイダンス、送迎、生活オリエンテーション、相談対応など、義務的支援に必要な費用を、外国人本人に負担させることは禁止されています。
また、
- 失踪した場合の違約金
- 保証金の徴収
- 不適切な二重契約
- 住居費の不適切な徴収
などについても注意が必要です。
さらに、雇用契約の変更・終了、支援計画の変更、受入れ困難となった場合など、一定の事由が発生した場合には、必要な届出を行わなければなりません。
9.「登録支援機関に任せているから安心」とは限らない
登録支援機関に支援業務を委託している企業であっても、特定技能制度そのものについて企業側が何も知らなくてよいわけではありません。
外国人を雇用する企業として、
「どのような支援が行われているのか」
「自社の外国人に問題が発生していないか」
「制度改正に対応できているか」
を把握しておくことは重要です。
特定技能制度は、制度改正や運用変更が頻繁に行われています。
そのため、登録支援機関と企業が情報を共有しながら、適切な支援体制を維持していくことが大切です。
10.企業が今から確認しておきたいこと
2027年4月以降の制度変更に備え、特定技能外国人を受け入れている企業は、まず次の点を確認しておきましょう。
チェックポイント
□ 自社支援なのか、登録支援機関への委託なのか
□ 自社支援の場合、支援責任者・支援担当者は誰なのか
□ 支援責任者が適切な立場にあるか
□ 養成講習の受講が必要になるか
□ 登録支援機関に委託している場合、委託内容が「支援計画の全部」なのか
□ 支援の実施状況を適切に管理できているか
□ 雇用契約や支援計画に変更があった場合の届出体制は整っているか
□ 外国人本人に不適切な費用負担をさせていないか
制度改正の直前になってから対応するのではなく、早めに現在の支援体制を確認しておくことをおすすめします。
まとめ
特定技能制度は、人手不足に対応するための重要な制度である一方、外国人を受け入れる企業には、適切な雇用管理と支援体制が求められます。
特に今後は、支援責任者に関する養成講習への対応が重要なポイントになります。
「うちは自社支援だから受講が必要?」
「登録支援機関に委託しているけど大丈夫?」
「現在の支援体制に問題はない?」
など、企業によって確認すべきポイントは異なります。
また、特定技能制度は制度改正が頻繁に行われるため、最新の情報を確認しながら対応することが重要です。
L&C行政書士事務所では、特定技能をはじめとする外国人雇用・在留資格手続について、企業様の状況に応じたサポートを行っています。
特定技能外国人の受入れや自社支援、登録支援機関との連携、在留資格の変更・更新など、外国人雇用についてお困りのことがありましたら、お気軽にご相談ください。

