自動車整備業界では、人材不足への対応として、在留資格「特定技能」を利用して外国人材を受け入れることができます。
特定技能の自動車整備分野では、自動車の日常点検整備、定期点検整備、特定整備などに外国人材が従事することが認められています。
一方で、自動車整備分野は一般の特定技能分野と異なり、受入れ企業に「認証工場」であることが求められるほか、自動車整備分野特定技能協議会への加入など、分野独自の要件があります。
さらに、2027年4月1日からは「自動車整備」と「車体整備」が別の業務区分として整理される予定であり、これから外国人材の受入れを検討する企業は、今後の制度変更も踏まえて準備することが重要です。
本ページでは、特定技能「自動車整備」について、受入れ企業が確認しておきたい要件、外国人側の技能・日本語要件、協議会、登録支援機関、受入れまでの流れをわかりやすく解説します。
まず確認したい重要ポイント
特定技能「自動車整備」を利用して外国人材を受け入れる場合、特に重要なのが次のポイントです。
| 確認事項 | ポイント |
|---|---|
| 受入れ企業の事業場 | 原則として、道路運送車両法に基づく認証工場であることが必要 |
| 協議会 | 自動車整備分野特定技能協議会への加入・協力が必要 |
| 雇用形態 | 特定技能「自動車整備」は直接雇用が基本 |
| 外国人の技能要件 | 自動車整備分野特定技能1号評価試験または3級自動車整備士技能検定など |
| 日本語要件 | 現行制度ではJFT-BasicまたはJLPT N4以上が基本。2027年4月以降の制度方針ではA2.2相当以上に整理 |
| 登録支援機関 | 支援を委託する場合、登録支援機関にも自動車整備分野独自の要件あり |
| 2027年4月から | 「自動車整備」と「車体整備」が別の業務区分になる予定 |
出入国在留管理庁および国土交通省の公式資料では、自動車整備分野について、受入れ企業に認証工場・協議会等の要件を設けています。
1.特定技能「自動車整備」とは
特定技能「自動車整備」は、自動車整備業界における人手不足に対応するため、一定の技能を持つ外国人材を受け入れるための在留資格です。
現在、特定技能では1号と2号の両方で自動車整備分野が対象となっています。
特定技能1号では、
- 自動車の日常点検整備
- 自動車の定期点検整備
- 特定整備
- 特定整備に付随する基礎的な業務
などに従事することができます。
また、2027年4月1日からは、制度上、
「自動車整備」
と
「車体整備」
が別の業務区分として整理される予定です。
2.特定技能1号でできる仕事
現行制度
現在の自動車整備分野では、特定技能1号外国人は、
- 日常点検整備
- 定期点検整備
- 特定整備
- 特定整備に付随する基礎的な業務
などに従事することができます。
特定整備には、電子制御装置整備なども含まれます。
また、関連する業務として、
- 整備内容の説明
- 関連部品の販売
- 部品番号の検索・発注
- ナビ・ETC等の電装品の取付
- 洗車
- 車内清掃
- 工場内清掃
- 部品等の運搬
- 設備機器の清掃
などが想定されています。
ただし、これらは主たる業務に付随して行う関連業務として整理する必要があります。
「洗車だけ」「清掃だけ」「部品運搬だけ」といった業務を中心に従事させることを前提とするものではありません。
3.2027年4月から「車体整備」が独立した業務区分に
ここは、これから特定技能外国人を採用する企業にとって非常に重要な変更です。
2027年4月1日から、自動車整備分野では、
自動車整備業務
- 日常点検整備
- 定期点検整備
- 特定整備
- 特定整備に付随する基礎的な業務
と、
車体整備業務
- 車体の板金
- 塗装
- ボデー・フレームの修正
- これらに付随する特定整備の基礎的な業務
が、それぞれ独立した業務区分として整理される予定です。
そのため、これから採用する外国人が、
「自動車整備」を担当するのか、
「車体整備」を担当するのか
を明確にしたうえで、必要な技能試験や業務内容を確認することが重要になります。
4.受入れ企業には「認証工場」の要件があります
自動車整備分野で特定技能外国人を受け入れる場合、受入れ企業には分野独自の要件があります。
その代表的なものが、
「認証工場」であること
です。
2027年4月以降の新しい分野別運用方針でも、特定技能所属機関について認証工場であることが明記されています。
したがって、
「自動車関係の会社だから特定技能を受け入れられる」
というわけではありません。
実際に外国人が就労する事業場について、認証工場の要件を確認する必要があります。
特に複数の店舗・工場を運営している企業では、外国人が実際に勤務する事業場について確認することが重要です。
5.自動車整備分野特定技能協議会への加入
自動車整備分野には、国土交通省が設置する
「自動車整備分野特定技能協議会」
があります。
特定技能所属機関は、協議会の構成員となること、協議会への必要な協力を行うこと、国土交通省等が行う調査・指導に必要な協力を行うことなどが求められています。
また、現在の制度では、初めて自動車整備分野の特定技能外国人を受け入れる場合、協議会加入について申請時期や提出書類に注意が必要です。
出入国在留管理庁の運用要領では、登録支援機関についても協議会への加入を含む要件が定められています。
協議会への加入方法や提出先については、国土交通省が案内しています。
6.登録支援機関に支援を委託する場合
特定技能1号外国人を受け入れる場合、受入れ企業は、支援計画に基づく支援を自社で行うことも、登録支援機関に委託することもできます。
ただし、自動車整備分野では、登録支援機関に支援を委託する場合にも分野独自の要件があります。
2027年4月1日からの新しい分野別運用方針では、委託先となる登録支援機関について、
- 自動車整備分野特定技能協議会の構成員であること
- 協議会への必要な協力を行うこと
- 国土交通省等の調査・指導に必要な協力を行うこと
- 一定の自動車整備等の資格・経験を持つ者を置くこと
などが定められています。
具体的には、次のいずれかに該当する者を置くこととされています。
- 1級または2級自動車整備士
- 自動車整備士養成施設で5年以上の指導に係る実務経験を有する者
- 自動車車体・電子制御装置整備士の技能検定に合格した者(車体整備業務区分の場合)
※2027年4月以降の新制度を前提とした整理です。
したがって、
「登録支援機関なら、どこでも自動車整備分野の支援を委託できる」
とは限りません。
委託を検討する場合は、登録支援機関側の分野要件も確認する必要があります。
7.外国人本人に求められる技能・日本語能力
技能要件
現在の特定技能1号では、自動車整備分野特定技能1号評価試験または3級自動車整備士技能検定などによって技能水準を確認します。
また、自動車整備分野の技能実習2号を良好に修了した場合には、一定の要件のもとで技能試験が免除されます。
日本語能力
現行の出入国在留管理庁の自動車整備分野の案内では、特定技能1号について、
- 国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)
- 日本語能力試験(JLPT)N4以上
が示されています。
また、技能実習2号を良好に修了している場合、日本語試験については職種を問わず免除されます。
一方、2027年4月1日からの新しい分野別運用方針では、特定技能1号の日本語能力水準を、
「日本語教育の参照枠」のA2.2相当以上
とすることが示されています。
そのため、今後採用する人材については、制度変更の時期と、どの試験・資格で日本語能力を立証するのかを最新の運用要領で確認することが重要です。
8.特定技能1号から2号への移行
自動車整備分野では、特定技能2号も認められています。
特定技能2号では、1号よりも高い技能水準が求められ、他の要員への指導を行いながら、自動車の日常点検整備、定期点検整備、特定整備等に従事することが想定されています。
2027年4月からの新しい制度では、特定技能2号についても、
- 自動車整備
- 車体整備
の業務区分が設けられます。
将来的に特定技能2号への移行を考えている場合は、1号として採用する段階から、どのような業務経験を積ませるのかを考えておくことが重要です。
9.特定技能「自動車整備」の受入れまでの流れ
自動車整備分野で外国人材を受け入れる場合、一般的には次のような流れで準備します。
STEP 1 受入れ企業の要件確認
まず、
- 認証工場であるか
- 外国人が実際に勤務する事業場はどこか
- 自動車整備分野の協議会への加入状況
- 雇用条件
- 支援体制
などを確認します。
STEP 2 外国人候補者の確認
候補者について、
- 技能試験
- 日本語試験
- 技能実習の修了状況
- 現在の在留資格
- 在留期間
- 職歴・実務経験
などを確認します。
STEP 3 担当する業務を確認
「自動車整備」なのか「車体整備」なのか、また関連業務として何を行うのかを整理します。
特に2027年4月以降は、業務区分が分かれるため、採用時の業務内容と試験区分を一致させることが重要です。
STEP 4 協議会・支援体制を確認
受入れ企業自身が必要な手続きを行うほか、登録支援機関に委託する場合には、委託先が自動車整備分野の要件を満たしているか確認します。
STEP 5 雇用契約・支援計画を準備
外国人本人との雇用契約を締結し、1号特定技能外国人の場合には支援計画を整備します。
STEP 6 在留資格の手続
海外から呼び寄せる場合は在留資格認定証明書交付申請、すでに日本に在留している外国人の場合は、状況に応じて在留資格変更許可申請などを行います。
STEP 7 就労開始
必要な手続が完了し、就労可能となった後、雇用契約に基づいて業務を開始します。
10.よくある質問
Q.自動車整備会社なら、どこでも特定技能外国人を受け入れられますか?
A.いいえ。
自動車整備分野では、受入れ企業について認証工場であることなど、分野独自の要件があります。
Q.認証工場ではなく、指定工場なら受入れできますか?
指定工場である場合でも、まず自動車整備分野の特定技能制度上求められる認証工場の要件を満たしているかを確認する必要があります。
「指定工場だから大丈夫」と判断するのではなく、実際に外国人が勤務する事業場について確認することが重要です。
Q.外国人に洗車や清掃をさせることはできますか?
関連業務として、洗車、車内清掃、構内清掃、設備機器の清掃などが想定されています。
ただし、これらは自動車整備の主たる業務に付随して行う関連業務として整理する必要があります。
Q.板金・塗装の仕事でも特定技能を受け入れられますか?
2027年4月1日からは、「車体整備」という独立した業務区分が設けられる予定です。
車体の板金、塗装、ボデー・フレームの修正などが車体整備業務として整理されます。
したがって、2027年4月以降に板金・塗装を中心として外国人を受け入れる場合は、「自動車整備」ではなく「車体整備」の要件を確認する必要があります。
Q.登録支援機関なら、自動車整備の支援をどこでもできますか?
いいえ。
自動車整備分野では、登録支援機関についても協議会加入や一定の資格・経験を有する者の配置など、分野独自の要件があります。
Q.技能実習2号を修了した外国人は試験が必要ですか?
技能実習2号を良好に修了している場合、一定の要件を満たせば、自動車整備分野の技能試験や日本語試験が免除される場合があります。
ただし、技能実習で修了した職種・作業と、特定技能で従事する業務との関係を確認する必要があります。
11.2027年4月の制度変更を見据えた準備が重要
自動車整備分野の特定技能制度は、2027年4月1日に大きく整理されます。
特に、
「自動車整備」と「車体整備」の業務区分が分かれること
は、受入れ企業にとって重要なポイントです。
これから外国人材の採用を検討している企業は、
- どの業務を担当させるのか
- 自動車整備なのか車体整備なのか
- どの技能試験が必要なのか
- 認証工場の要件を満たしているか
- 協議会への加入は済んでいるか
- 自社支援か登録支援機関への委託か
- 委託する登録支援機関は分野固有の要件を満たしているか
を事前に確認しておくことが重要です。
まとめ
特定技能「自動車整備」は、自動車整備業界の人材不足に対応するため、外国人材を受け入れることができる制度です。
一方で、一般的な特定技能分野とは異なり、
「認証工場」
「自動車整備分野特定技能協議会」
「登録支援機関の分野独自要件」
など、確認すべき事項があります。
さらに、2027年4月1日からは「自動車整備」と「車体整備」が別の業務区分となる予定です。
そのため、これから外国人材を採用する企業は、単に「特定技能で外国人を採用する」というだけではなく、実際に担当させる業務、必要な技能、受入れ企業の要件、支援体制をまとめて確認することが重要です。
L&C行政書士事務所では、特定技能「自動車整備」をはじめ、特定技能外国人の在留資格手続や受入れに関するご相談を承っています。
「うちの整備工場で特定技能を受け入れられるのか」
「認証工場の要件を満たしているのか」
「板金・塗装の外国人材を受け入れたい」
「登録支援機関に支援を委託したい」
「2027年の制度変更を踏まえて採用したい」
といった場合も、受入れ企業の状況や外国人本人の経歴を確認したうえで、必要な手続きを整理します。

